相続人が兄弟のみになるケースについて!遺産の取得割合や注意点も解説

相続人が兄弟のみになるケースについて!遺産の取得割合や注意点も解説

身内の誰かが亡くなった場合に、誰が遺産を相続するかは一定のルールで決まります。
故人の兄弟のみで遺産を分け合うこともありますが、あまり一般的なケースではないため、どのような状況で起きるのかには注意が必要です。
そこで今回は、相続人が兄弟のみになるのはどのようなケースかにくわえ、発生時の遺産の取得割合と注意点も解説します。

相続人が兄弟のみになるケース

相続人が兄弟のみになるケース

相続人が兄弟のみになるケースは、以下のとおりです。

配偶者や父母がいない

故人の兄弟のみが遺産を受け取る状況としては、故人に配偶者や父母などの身内がほかにいないケースが基本です。
理由は、民法が定めている相続順位にあります。
相続が起きた場合、配偶者は遺産を受け取る権利が常に与えられます。
配偶者と並んで遺産を受け取る方に関して、第1順位になっているのは故人の子どもです。
故人の子どもがすでに亡くなっているなら、存命している孫やひ孫などが代わりに相続へと参加できます。
子どもや孫などが誰もいない場合、次に相続の権利を得るのは第2順位である故人の父母です。
故人の父母がすでにいないなら、存命の祖父母や曾祖父母などが代わりに遺産を受け取ります。
第1順位・第2順位の方が誰もいない場合は、第3順位にあたる故人の兄弟姉妹へと相続権が移ります。
相続人は以上の流れで決まる仕組みであり、子どもや孫、父母や祖父母などの誰かが存命なら、兄弟に相続権は回ってきません。
優先順位の低さから、兄弟のみで遺産を分け合う状況は、故人に配偶者や父母などの身内がいない場合に限られがちです。

相続放棄した法定相続人がいる

存命の配偶者や子ども、父母などがいるケースでも、それぞれの方が相続放棄を選んだら、兄弟のみが遺産を受け取る状況となりえます。
相続放棄とは、遺産の受け取りをすべて辞退する方法です。
相続の開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申し立てをすれば認められます。
相続人を決めるうえでは、相続放棄を選んだ方は候補者から外れ、次の順位の方に相続権が移る仕組みです。
たとえば、第1順位の子どもが相続放棄を選んだら、第2順位にあたる故人の父母が遺産を相続するかどうかを検討します。
第1順位や第2順位の方が、相続放棄をもれなく選べば、残るのは第3順位の方のみです。
配偶者も同じく相続放棄を選べば、兄弟のみが遺産を受け取る状況となります。
なお、遺族から相続放棄が次々と選ばれるケースでは、故人が多額の借金を残していることが多いです。
全員が相続放棄を選んだ結果として、兄弟のみが候補者になったならば、遺産に何か問題がないか、慎重に判断したいところです。

相続人が兄弟のみに!遺産の取得割合はどうなる?

相続人が兄弟のみに!遺産の取得割合はどうなる?

兄弟のみが相続人に決まった場合、遺産の取得割合は以下のようになります。

兄弟の法定相続分は遺産のすべて

遺産は相続人同士で分け合うため、兄弟以外に候補者が誰もいないなら、遺産のすべてを兄弟が取得します。
故人の兄弟が1人しかいないなら、相続人に決まった方が単独ですべての遺産を受け取って構いません。
相続人に決まった兄弟が複数いる場合は、兄弟間で遺産を分け合う必要があります。
兄弟間での遺産の取得割合に差はないため、2人兄弟なら2等分、3人兄弟なら3等分するのが基本です。
そのため、遺産が1億円、相続人に決まった兄弟が4人なら、1人あたりの取り分は2,500万円となります。

相続人が配偶者と兄弟の場合

故人の配偶者も、兄弟と一緒に相続人と決まった場合、遺産の取得割合には注意が必要です。
遺産の取得割合において、配偶者は兄弟よりも優先されており、遺産全体の4分の3を受け取るように定まっています。
兄弟たちの取得割合は、残りの4分の1に限られます。
そのため、配偶者も相続に参加しているなら、まずは兄弟たちの取り分を正確に計算することが大事です。
遺産が1億円なら、配偶者の取り分が7,500万円で、残りの2,500万円が兄弟たちに回される計算です。
この2,500万円を兄弟同士で等分するため、4人兄弟なら、1人あたりの取り分は625万円となります。

遺留分はどうなるのか

遺留分とは、相続人に認められる、遺産の最低取得割合です。
故人が遺言書を作っており、特定の方にすべての財産を譲るように指定していると、ほかの相続人の遺留分を侵害する形となります。
この場合に遺留分を侵害された方は、侵害している方に対して遺留分の支払い請求が可能です。
以上の仕組みから、遺産の分け方について故人が特殊な形を指定していても、相続人はある程度の財産が得られます。
しかし、故人の兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
そのため、兄弟のみが相続人に決まったとしても、すべての遺産をほかの方に譲る旨の遺言書があると、兄弟たちの遺産の取得割合はゼロとなります。

相続人が兄弟のみになる場合の注意点

相続人が兄弟のみになる場合の注意点

相続人が兄弟のみになる場合は、以下の注意点を押さえておくことが大事です。

遺言書の有無を確認

誰が相続人となるかは、先述の相続順位にしたがって決まるのが基本ですが、遺言書がある場合は別です。
戸籍上の関係はなくとも、晩年に身の回りの世話をしてくれた方に遺産を相続させるなどと、遺言書に指定があることも多いです。
遺言書を確認しないと、相続人を正確に確定できないため、まずは故人の自宅などをしっかり探してみましょう。
なお、故人が自分で作った自筆証書遺言を見つけた場合には注意点があり、その場では開封せず、家庭裁判所で検認を受けなくてはなりません。
また、遺言書の保管や客観性をふまえ、公証役場をとおして遺言書を作るケースが、近年では珍しくありません。
そのため、公証役場に遺言書の有無を一度確認するのも、注意点として押さえたいポイントです。
遺言書がどこにもないことを確認したら、相続順位にしたがって相続人を確定し、遺産分割協議に入って問題ありません。

代襲相続が1代のみ

相続人となるはずだった方が先に亡くなっている場合に、代わりの相続人を立てる仕組みを代襲相続と呼びます。
代襲相続を実際におこなうにあたり、元の相続人が故人の子どもや父母だったなら、適用範囲に制限はありません。
子どもの代わりなら孫やひ孫、父母の代わりなら祖父母や曾祖父母などと、何代にわたっても代わりの相続人を立てられます。
一方、元の相続人が兄弟姉妹だった場合、代襲相続が1代のみとされるのが注意点です。
つまりは、相続人に決まった兄弟の子ども、故人から見れば甥や姪までしか対象になりません。
甥や姪もすでに亡くなっているなら、たとえ甥や姪の子どもが存命でも、代理での相続は不可能です。

相続税額の2割加算の対象

兄弟のみによる相続の注意点として、相続税額は要チェックです。
配偶者・子ども・父母以外の方が遺産を受け取った状況では、相続税額が2割高くなります。
故人の兄弟は2割加算の対象なので、相続税がかかるなら、負担の増加が避けられません。
相続税額が1,000万円だったなら、2割加算の影響で、最終的な納税額は1,200万円となる計算です。
ほかの相続人と同じ税額で計算していると、納税資金が不足する事態になりかねません。
相続税の発生が予想される状況で、兄弟のみが遺産を受け取るなら、税額の変化は注意点として、しっかり押さえておきましょう。

まとめ

故人の兄弟のみが相続人に決まるケースとしては、ほかに相続人となれる身内がいない状況が基本ですが、ほかの候補者の全員が相続放棄を選んだ場合にも同じ結果となります。
兄弟たちの取得割合は、配偶者がいなければ遺産のすべてとなりますが、配偶者がいるなら全体の4分の1に留まります。
相続にあたっての注意点は、第三者への遺産分けを故人が指定している可能性があるため、まずは遺言書を探すことなどです。