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空き家対策特別措置法は、近年増え続ける空き家への対策として、2015年に施行された法律です。
この法律が2023年に改正され、いくつかの変更点が生じました。
そこで今回は、空き家を所有されている方に向けて、空き家対策特別措置法の改正に関して押さえておきたいポイントなどを解説します。
2023年に改正された空き家対策特別措置法のポイントとは
近年は空き家が増え続けており、社会問題になっています。
空き家の数は1998年からの20年間で約1.5倍となり、今後も増加する見込みです。
そのため、対策として、2015年に空き家対策特別措置法が施行されました。
ただし、空き家対策特別措置法の施行後も、問題に取り組む自治体からは、より実情に沿った制度を求める声が上がっていました。
そこで、2023年に改正がおこなわれ、現場の意見に沿ってより実情を反映させた空き家対策特別措置法が誕生したのです。
新しい空き家対策特別措置法はどのような点が変わったのか、おもなポイントを3つ確認しておきましょう。
2023年に改正されたポイント①空き家等活用促進区域制度の創設
活用されていない空き家が増えると、地域の機能が低下するおそれがあります。
けれど、活用するために建て替えや改築が必要でも、従来の法律では建築基準法などの規制によってできないことがありました。
そこで、2023年の法改正で創設されたのが、空き家等活用促進区域制度です。
この制度は、自治体が定めた区域内の空き家は接道や用途の規制を緩和できるものであり、活用促進につながることが期待されます。
2023年に改正されたポイント②管理不全空家が新設
2つ目のポイントは、特定空家の前段階であると判断された空き家は、管理不全空家に認定されるようになったことです。
その目的は、行政が早期介入することによって、周囲へ悪影響を及ぼす状態になってしまうのを防ぐことです。
認定される条件などについては、のちほど解説します。
2023年に改正されたポイント③プロセスの円滑化
従来の空き家対策特別措置法では、特定空家を行政代執行によって管理や処分する際でも、手続きや費用の回収に時間的猶予が設けられていました。
けれど、それでは緊急性が高まっている場合に、迅速な対応が難しいことがあります。
そこで、2023年の法改正では、所有者に対する報告徴収権が市区町村長に付与されました。
これによって、緊急時には手続きを省略して解体などの対応をすることや、所有者の財産から強制的に費用を徴収することが可能になりました。
プロセスが円滑化されたことによって、周辺地域の安全のために必要な行政代執行は、迅速におこなわれるようになるでしょう。
2023年改正の空き家対策特別措置法にある管理不全空家とは
2023年に改正された空き家対策特別措置法のポイントの1つに、管理不全空家の新設があります。
先述のとおり、特定空家の前段階であるとみなされると、認定される可能性があるので注意が必要です。
2つには異なる部分があるので、認定される条件や認定されるとどうなるかについて、それぞれ確認しておきましょう。
特定空家とは
特定空家とは、周囲に悪影響を及ぼすと判断された空き家のことです。
2023年に改正される以前から、空き家対策特別措置法に定められていました。
認定される条件には、保安上危険となるおそれや衛生上有害となるおそれが著しいことなどがあります。
そして、認定されるとさまざまなペナルティを科される可能性があるので、注意が必要です。
特定空家に認定されると行政から助言や指導を受け、従わないと勧告、命令、戒告と進み、最終的には代執行がおこなわれます。
認定後すぐにペナルティを科されるわけではありませんが、勧告に従わないと固定資産税の軽減措置を受けられなくなり、税額が増えてしまいます。
命令に従わないと50万円以下の過料を科され、それでも改善が見られないと、最終的には代執行によって強制的に解体されてしまうでしょう。
そのため、認定されてしまったら、行政の助言や指導にすみやかに対応することが大切です。
管理不全空家とは
空き家対策特別措置法の改正によって新設された管理不全空家とは、放置すると特定空家になるおそれのある建物です。
認定されると行政から指導を受け、従わないと勧告を受けます。
そして勧告に従わないと、固定資産税の軽減措置を受けられなくなってしまうので、注意が必要です。
固定資産税の軽減措置とは、住宅がある土地の税額が減額される制度であり、これを受けられるかどうかによって納める税金が変わります。
そのため、これまでは軽減措置を受ける目的で、使わない空き家をそのままにしているケースも多く見られました。
そこで、今回の改正では、固定資産税の減額解除が管理不全空家にも適用されることになったのです。
この点が、2023年の法改正による大きな変化の1つです。
2023年改正の空き家対策特別措置法の認定を回避する対策とは
従来の特定空家だけではなく、2023年の空き家対策特別措置法改正によって新設された管理不全空家に認定されると、デメリットが生じてしまいます。
そのため、空き家を所有している場合は、認定されないように対策をしたほうが良いでしょう。
そこで、講じておきたい3つの対策について、それぞれ解説します。
空き家に講じるべき対策とは①管理する
だれも住んでいない空き家は、老朽化が急速に進むので、きちんとした管理が必要です。
空き家の管理方法は、定期的に現地へ行き、換気や通水、掃除などをおこないます。
室内だけではなく、庭や空き家の周囲にゴミなどが散らかっていないかどうかも、しっかりと確認しておきましょう。
そして、破損や不具合がないかをチェックして、必要に応じて修繕をします。
これらの管理を適切におこなっていれば、空き家の老朽化を遅らせることができ、特定空家などに認定されることを防げるでしょう。
空き家に講じるべき対策とは②活用する
定期的に空き家を管理することが難しい場合は、活用を検討しましょう。
だれかが住んでいれば、空き家ではなくなります。
また、人が住んでいる家は、換気や通水などの管理が日常生活でおこなわれるので、空き家よりも老朽化が進む速度は遅くなるでしょう。
空き家の活用方法には、「ご自身や親族が住む」「賃貸物件として貸す」「民泊をはじめる」などがあります。
空き家の需要がなさそうな場合は、解体して土地を活用する方法もあります。
ただし、住宅のない土地は固定資産税の軽減措置が適用されないため、現状よりも税額が上がる可能性がある点に注意しましょう。
空き家に講じるべき対策とは③売却する
管理が難しく、活用もできそうにない場合は、売却すると特定空家などに認定される心配がなくなります。
空き家の売却方法は、そのまま中古住宅として売却するほかに、「古家付き土地として売る方法」と「解体して更地にしてから売る方法」があります。
買主がなかなか見つからない場合は、空き家に値段を付けずに古家付き土地として売り出すと、売却できる可能性が高まるでしょう。
土地の需要のほうが高そうなときは、空き家を解体すると、スムーズに売却できるかもしれません。
ただし解体する場合は、費用がかかることと、更地は固定資産税の軽減措置を受けられない点に注意しましょう。
まとめ
2023年の空き家対策特別措置法の改正におけるポイントは、空き家等活用促進区域制度や、管理不全空家の認定制度ができたことなどです。
特定空家や管理不全空家に認定されると、さまざまなデメリットが生じます。
そのため、管理が難しい空き家や活用の予定がない空き家は、早めに売却を検討しましょう。
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